スポンサーサイト

  • 2015.08.04 Tuesday

一定期間更新がないため広告を表示しています

  • 0
    • -
    • -
    • -
    • -

    <お勧め読書038:一路>

    • 2015.06.24 Wednesday
    • 12:08




    『一路』上下  (中公文庫 浅田次郎)

    京都から東京まで徒歩で行くとしたら、あなたはどちらを選びますか?
    1、東海道 2、中仙道

    現代ならば、もちろん 1東海道だろう。

    しかし、江戸時代なら、2中仙道が正解だ。

    木曽谷、十曲峠、鳥居峠、塩尻峠、碓氷峠、

    名だたる山岳地帯を越えていく中山道。

    行くなら今でしょう。行くなら東海道でしょう。

    と思うのだが、正解は中山道である。


    東海道は53宿。中山道は69宿。

    旅程的にも東海道有利であるのに、中仙道を選ぶ。

    その理由は東海道の「川渡し」である。

    東海道にとって、川は最大の障害であったのだ。

    いったん「川止め」が起こると、いつ回復するかわからない。

    旅人は何日も足止めをくらう。

    乏しい旅費が底をつき路頭に迷う。

    そんな思いをするのなら、

    いっそ険しくても確実な中仙道、となるのである。


    長い前振りであったが、

    中仙道を参勤交代する物語が、この『一路』である。

    浅田次郎にしては「軽すぎない?」という語り口であるが、

    なかなかどうしてストーリーに吸い込まれるのである。

    初の行列差配役を勤める供頭・小野寺一路の活躍。

    うつけと呼ばれるお殿様の見事な変身。

    脇役をかためる武士や奴や馬までもが、それぞれのキャラを発揮する。

    理屈抜きに楽しめるエンタメ時代小説のお手本である。


    <shiozyのお勧め度☆☆☆☆>
    『一路』上下 単行本で税込み1,680円×2=3,360円。
    高いと思う人は、図書館にいくか、文庫を読むがいいぞ。
    「川止め」で待たされるのはイヤだと思うなら、中仙道を行くべし。

    -----------------------------------------------
    ↓↓ランキング卒業しました。足跡記念にどうぞ。
    広島ブログ  山口ブログ


    <お勧め読書037:涙垰―赤名・布野石見銀銅助郷公事>

    • 2015.06.19 Friday
    • 11:01




    『涙垰―赤名・布野石見銀銅助郷公事』  (菁文社 戸塚らばお)

    時代小説といえば、主人公は歴史上の英雄か、

    あるいは想像上の造形人物というのが通り相場だが、

    地方にも埋もれた傑物がいるのである。

    弱者であるがゆえに、歴史のなかに埋もれてしまい、

    光を当てられることはない。

    そんな人物に焦点を当てて、果たして小説になるのか。

    島根の小藩・広瀬藩の赤名宿二十一か村は、石見銀山の輸送荷役を担う。

    島根県赤名から広島県三次まで七里(約28キロ)とはいえ、

    そこに立ちはだかるのは名にし負う豪雪地帯。

    馬も通わぬ険路を馬280頭人足500名で銀銅を運ぶのである。

    この苦役に貧村は疲弊してしまう。

    武士という権力構造に、強訴・一揆という実力行使ではなく、

    公事(くじ:訴訟裁判)という一見穏便な手法をとった庄屋達がいた。

    せめて赤名宿から布野宿までの3.5里に半減できないかと、

    幕府に訴えるのである。

    ここには、赤名と布野という貧宿同士の対立があり、

    幕府という巨大な官僚機構が横たわる。

    十数年の歳月を費やしても何の解決ももたらさない虚しさに、

    ついには、銀銅を布野宿に置き去りにするという実力行使に及ぶのである。

    強訴でもなく一揆でもない、百姓の意地の発露である。

    若き庄屋・半平太は打ち首。

    悲劇のうちに幕は降りるのだが、その父親は夢見る。

    「峠を越えなくていい隧道(トンネル)を掘ろう」

    それが現在の赤名トンネルかどうかは定かではないが、

    そう思いたくなる歴史ロマンを予感させる。

    吉田掛合から三次までの高速道路が開通した。

    半平太の死から約200年後である。


    <shiozyのお勧め度☆☆☆☆>
    地方には、地方ならではの優れた作家がいる。
    埋もれた史実を拾い集め、それを小説にしてみせる。
    この戸塚らばおもその一人だろう。
    この「涙垰(なみだたお)」を読んでいる途中に、
    どこか「既視感」に見舞われた。
    蔵書を探ってみると、あった。
    既読の作家だった。
    私より二歳上の三次在住の作家。戸塚らばお。
    お会いしてみたいものだ。
    「涙垰―赤名・布野石見銀銅助郷公事」
    三次市の地方出版社・菁文社(せいぶんしゃ)刊
    戸塚らばおとこの出版社にも拍手を贈ろう。

    -----------------------------------------------
    ↓↓ランキング卒業しました。足跡記念にどうぞ。
    広島ブログ  山口ブログ

     

    <お勧め読書036:注文の多い注文書>

    • 2015.06.16 Tuesday
    • 12:03




    『注文の多い注文書』  (筑摩書房 小川 洋子,クラフトエヴィング商會)

    小川ワールドの新境地誕生か。

    クラフト・エヴィング商會とのコラボレーションは、

    さながらジャズの即興演奏に似て、

    両者の真剣勝負緊張感がたまらなくいい。

    小川洋子の投げた変化球を、

    クラフト・エヴィング商會が絵と文で打ち返す。

    そこに奇妙なお話の世界が広がり、

    読者を「大人の童話の世界」に誘うのである。

    構成・装丁・文体、どれをとっても一級の仕上がりである。


    <shiozyのお勧め度☆☆☆☆☆>
    「ないもの、あります」
    この世に存在しそうにないものの発注を受けて、
    それに答えを出していく発想力が素晴らしい。
    文章だけでなく、映像も秀逸。

    -----------------------------------------------
    ↓↓ランキング卒業しました。足跡記念にどうぞ。
    広島ブログ  山口ブログ

     

    <お勧め読書035:きみ去りしのち>

    • 2015.06.12 Friday
    • 11:48




    『きみ去りしのち』  (文春文庫 重松 清 )

    昨年の大晦日に「十字架」を読んで重たい気分で正月を迎えた。

    以来、しばらく遠ざかってしまっていた。

    この「きみ去りしのち」もやはり重たい。

    あとがきに「喪失感との折り合いのつけ方を探ってみたかった」

    とあるように、関根さんと娘明日香の喪失感を縦軸に、

    旅で出会った人びとのそれを横軸に、

    それぞれの「折り合いのつけ方」が語られていく。

    9章からなる長編であるが、

    それぞれの章が短編として独立している。

    重松は短編が素晴らしいという持論が証明された一冊だ。


    <shiozyのお勧め度☆☆☆☆>
    シゲマツは私淑する作家だが、
    テーマがだんだん重くなってきて、
    しばらく遠慮していたのだが、
    たまには真摯なテーマにも触れてみないとね。

    -----------------------------------------------
    ↓↓ランキング卒業しました。足跡記念にどうぞ。
    広島ブログ  山口ブログ

     

    <お勧め読書034:ロストケア>

    • 2015.06.08 Monday
    • 11:49




    『ロストケア』  (光文社 葉真中 顕)

    日本ミステリー大賞新人賞受賞作。

    葉真中顕(はまなか あき)のデビュー作である。

    寝たきり認知症の老人たちを43人も毒殺した

    介護職の男の「喪失という名の究極の介護」のお話である。

    介護する介護される双方の幸せのために殺人を犯すのだ。

    確信犯。

    妻の介護歴15年の小生にとって

    ストレートに受け入れられる「正義」ではないが、

    逆説的に世の中に警鐘を鳴らす意義がある。

    大胆に切り込んだ凄みのあるミステリーだ。


    <shiozyのお勧め度☆☆☆☆>
    『絶唱』に続いて読んだのだが、
    葉真中顕(はまなか あき)は、これからの注目株だな。

    -----------------------------------------------
    ↓↓ランキング卒業しました。足跡記念にどうぞ。
    広島ブログ  山口ブログ

     

    <お勧め読書033:わが家の問題>

    • 2015.06.03 Wednesday
    • 14:44




    『わが家の問題』  (集英社文庫 奥田英朗)

    どんな家庭にも「我が家の問題」がある。

    それは当事者にとって深刻な問題である。

    だがしかし、外から見ればどこにでもある問題なのだ。

    ここに書かれている問題は、

    家庭という狭い世界から配偶者を見たとき、

    一面的ではあるものの真実を捉えている。

    そして、その眼差しがとても温かだ。

    夫、妻、娘、それぞれの優しさが素晴らしい。

    ちょっとうるっときた自分がいる。

    好短編集だ。


    <shiozyのお勧め度☆☆☆☆>
    『わが家の問題』と対をなすものに『家日和』がある。
    奥田英朗の人を見る眼差しが温かい好著である。

    -----------------------------------------------
    ↓↓ランキング卒業しました。足跡記念にどうぞ。
    広島ブログ  山口ブログ

     

    PR

    calendar

    S M T W T F S
     123456
    78910111213
    14151617181920
    21222324252627
    282930    
    << June 2015 >>

    shiozyの愛飲焼酎はこれ。

    selected entries

    categories

    archives

    recent comment

    recent trackback

    links

    profile

    search this site.

    others

    mobile

    qrcode

    powered

    無料ブログ作成サービス JUGEM