9月に入ってガソリンの需給がゆるんできた。
元売りの仕切値が下がって、ガソリン価格は下落した。
ふう、これでお客さんが戻ってきてくれると、安堵したのは早計だった。
安売り競争がかえって激化したのだった。
「地域最安値に挑戦します」
こんな看板を掲げたうちの店は、安値の先頭に立たざるを得なくなったのだ。
地上5メートルの高さにそびえる電光掲示板は、「レギュラー164円」の表示だが、
スタンド入り口の立て看には、「レギュラー160円」の表示。
デジタルとアナログの二重価格なのだ。
「店長、これじゃお客さん戸惑いますよ」
こう言ったら、店長は
「しょうがないの。電光掲示板は全店の統一価格。
うちの店独自の価格は、立て看でしか表示できないのだから」という。
せっかく、地域最安値に挑戦しているのなら、
お客さんが誤解するような電光掲示板は消してしまえばいいものを。
ボクにわからないむつかしい規制があるのだろうね。
ややこしい業界だ。
うちの店とモロ競合関係にある向かいの無人店が「160円」で追随しているとき、
少し離れたスタンドでは「168円」で営業している。
高速道路のスタンドは「175円」だ。
8円から15円の価格差は大きいよね。
なのに、お客さんの節約モードは緩まない。
店長の決断は間違っていたのか?
バイトのボクでも不安になるのだから、店長の苦悩は甚大だ。
苦悩といえば、ボクも同じだ。
就職戦線に取り残されて、一周遅れの就職活動を余儀なくされて、
それでもどう生きていきたいのかわからない自分。
我ながら情けないと思うんだよね。
情けないけれど、それが現実のボクだ。
リエさんは「もう悩むような年じゃないんじゃないの?」と
ボクを焦らすけれど、自分の進むべき道が見つからないのだからどうしようもない。
「えいやっと就職先を決めても、長続きしない気がするんだよなあ」
リエさんに正直にこう言うと、
「じゃ、両親にそう告白すれば」
あっさり切って捨てられた。
「もう一年、大学に残ろうか?」
自分に問いかけてみた。
一年残ったからといって、進むべき道が見つかるとは思えない。
しかし、漠然と「人の笑顔が見える仕事につきたい」という想いはある。
「これからの一年でなんとかなる」
自分で自分を納得させてみた。
その夜、この決意を両親に伝えようと思った。
「かあさん。もう一年大学に残ります。
授業料や生活費は自分で稼ぎます。
次の一年で自分の進むべき道が見つかりそうな予感があります。
ボクのわがままを許してください。」
こんな気持ちを送ろうと決意したとき、
これにふさわしいカタチって何だ?と、疑問が湧いた。
ケータイ? メール?
デジタルでは、軽すぎるよな。
そう思ったら、無性に手紙が書きたくなった。
誤字脱字に気をつけて、自分なりにちゃんと書けたつもりだ。
我ながら良く書けたと思ったが、最後にひとつだけ書き直したのだった。
かあさんを母上様と。
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「山田さんち」のなほさん。「隣のカモミール」の柿さん。私もこのお題で書いたよ、という方はぜひトラックバックを打ってください。
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