お題を出して、みんなで好きなように表現してみよう。
こんな思いつきで生まれた今回の企画第一弾。
お題は
「ひな人形」Shiozyには似つかわしくないきれいなお題であるな。
きれいなお題なので、珍しく早朝のアップにしてみた。
漫画ありの、小説ありの、いろんな表現があるなか、
Shiozyは「ショートショート」で迫ってみた。
ブログコラボという、前例のない試み。
さて、デキはどうでしょうかね。
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駆け落ち同然で、父親の反対を押し切って結婚した娘から、
数年ぶりの電話がかかってきた。
実家の電話にかけると、父親が出るかもしれないという配慮からか、
母親の私のケータイにかかってきた。
娘が家を出て行くまで、持っていなかったのに、
どこで調べたのだろう、私のケータイ番号。
それだけせっぱつまった話なのだろうかと、胸騒ぎを覚えた。
「お母さん、わたし、和子。ごぶさたです。」
意外に元気な声に思わず安堵する。
「お父さんに言うと叱られそうなので、お母さんにだけ報告しておきます。」
「赤ちゃんができました。妊娠2ヶ月で、つわりの真っ最中です。」
娘のなんとも屈託のない話しぶりに、返す言葉がない。
夫婦仲良くやっているのか。ちゃんと生活できているのか。
聞きたいことはいろいろあるけれど、娘の元気な声を聞いただけで、
胸がいっぱいになってしまった。
けっきょく、会話らしい会話も交わさずに、電話が切れてしまったのだった。
その夜、夫が帰宅して、娘の妊娠を話したものかどうか迷ったけれど、
隠しておくこともできないと思い直して、夫に告げた。
「和子にねえ、赤ちゃんができたみたいよ。
私たちもとうとうジジババになるわねえ。」
「・・・・」 夫は無言だった。
気まずい雰囲気が流れて、夫はそそくさと食事をすませ、
自室にこもってしまった。
普段からあまりモノを言わない夫であるが、
貝のように口を閉ざしたときは、放っておくに限る。
また折を見て、出産準備などの話を切り出してみよう。
ふう、とため息をついて、台所の後片付けに向かった。
私がお風呂からあがったとき、和室の居間でなにやらゴソゴソ音がする。
そっとふすまを開けて覗いてみると、夫が押入れから何かを取り出している。
七段飾りのひな人形だった。
娘が生まれて3歳のとき、
少ない給料の中からやりくりして買った我が家には不釣合いに豪華なひな飾りだ。
当時の安アパートには、大きすぎて苦笑したのを思い出す。
「和子が結婚するとき、これを持たせてやるのだ。」
夫の宣言だった。
両親が若い頃亡くなって係累のない夫には、
ひな人形が唯一の「手渡せるもの」に思えたのかもしれない。
孫が女の子なら、代々受け継いでくれるかもね、お父さん。
夫の背中につぶやいてみた。
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コラボの参加者はこちら。ぜひ、見に行ってみてください。
「山田さんち」のなほさん。「隣のカモミール」の柿さん。私もこのお題で書いたよ、という方は
ぜひトラックバックを打ってください。
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