<いやがる口>

  • 2010.10.27 Wednesday
  • 23:45


「口のない友達」を二話連続掲載しよう。  と書いたのに、

 

忘れてしまいそうになったShiozyである。(汗)

 

深夜12時前に思い出して、あわてて更新したのである。

 

ふぅ、なんとか間に合って安堵するShiozyなのである。

 

それではお休みなさい。

 


桐矢連載16話。

 

突然物語が動き出したような。。。

 

エンディングへ向けてどう展開していくのか。

 


-------------------------------------------------


「口のない友達」16  いやがる口   桐矢 絹子

 


「いやなの?」

 

だれに話しかけているのか、自分でもよくわかりませんでした。

 

「ねえ、答えてよ。そうなんでしょう?」

 

しばらくの間、沈黙が続きました。

 

わたしは呼吸を整えながら、じっと待ちました。

 

「・・・・そうですよ・・・」

 

思わず息を飲みました。

 

いま、しゃべったのはわたしじゃない。

 

「・・・あなたはだれ?」

 

答えは聞かなくてもわかりました。

 

だけど聞かずにはいられなかった。

 

「・・・・口ですよ。あなたの前の人のね」

 


今までにも、口が勝手に動いてしまうことは何度かありました。

 

でも、ただ動いただけ。

 

以前の人の癖がそうだったのかなという、その程度のものでした。

 

今回はわけが違う。

 

口が、はっきりと意思表示をしている。

 


「あなたはどんな人だったの?」

 

「・・・・知らないほうがいいとおもいますよ」

 

変な気分だった。

 

わたし、口と会話してる。

 

口は、無口です。

 

聞いたことに時間をかけてゆっくりと答えるだけで、

 

自発的にわたしに問いかけるというようなことはありませんでした。

 

不安とイライラで頭がどうかなってしまいそう。

 

いえ、もしかしたらもうなっているのかもしれない。

 

指先が震えていることに気がついて、手をぎゅっと強く握りしめました。

 

ここで崩れ落ちてしまうとわたしの負けだ。

 

そう思い、ひざと足の裏に力を込めました。

 

どれくらい、鏡に映った自分の口をみつめていたでしょう。

 

この、しずかで奇妙な時間の流れをさえぎったのは、わたしでした。

 


「ねぇ、聞いてください。わたし、あなたには本当に感謝してるんです。

 

あなたから口をもらったおかげで、わたしは普通の人と変わらない生活が

 

できるようになりました。あなたのおかげです。

 

でも、いまこの口は、もうわたしの口なんです。

 

どうか完全なかたちでわたしに使わせてください。

 

お願いします」

 


しばらく待ったけれど、口は動きません。

 

のどに乾きを覚えました。

 

不安が募り、涙交じりの声で哀願するように自分の口にいいました。

 

「わたし、あの人が好きなの。おねがい。邪魔しないで」

 

口はなにも言いませんでした。

 

 

 

「河辺さん、いろいろすみません」

 

「ん?なにが?」

 

言えない。

 

口が前の持ち主の意識を持っているみたいだなんて、

 

そんなこととても言えません。

 

やっぱりわたしは口のない人間なんだと、思われてしまう。

 

それだけは、絶対にいやです。

 

「・・・わたし、男の人と付き合うのはじめてで。だから緊張してしまって」

 

「わかってる」

 

ごめんなさい河辺さん。   <続く>

 


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コメント
私は、人の話を聞くのが好きでついつい聞き入ってしまい自分は何も発言しない。ことが多かったのですね。別に話すのを我慢しているわけではないのですが、すると「黙っている奴が一番怖いよな。何、感がているかわからん」と言われたことがあります。そうかそんな風に見られてたとは・・・自分自身どきっとするような指摘でした。
すご〜い細かいことが気になっているにゃんたです。
句読点、鉤括弧の中で、文中では使用しているのに、閉じ括弧の前では読点がないのは、何故でしょう?
(ほんと、細かいところでごめんなさい。)

臓器移植すると、前の臓器の持ち主の性格に似てくるor影響される場合があると聞いたことがあります。
勿論、臓器移植を受けた人は、臓器提供者が誰であるか、知らないはずなんですが。
  • にゃんた
  • 2010/10/28 7:41 PM
もう一度、チカちゃんのブルーを読み直してみました

口数が少ない人が好きっぽい河辺さん

口を手放したおかげで穏やかに暮らしている
 というおばあちゃん

さてさて、どういうふうに結ぶのだろう?
  • のりたま
  • 2010/10/29 9:51 AM
辰あにい。こんにちは。聞き上手の辰あにいですね。私も若い頃は一言もものを言わないタイプでした。だからと言って、聞き上手ではない。単なるへそ曲がりな無口、でした。(汗 11月17日の「ひは。講演」よろしくです。
  • shiozy
  • 2010/10/29 2:16 PM

にゃんたさん。こんにちは。カギ括弧のなかの句読点の打ち方。←なかなかいい質問ですよ。ガッコの教科書では文末を。」と教えますが、最近の新聞雑誌編集では文末の。は付けないで」(カッコ閉じ)のみとするのが主流です。「・・・・である。だがしかし・・・である」



口のない友達のつぎは臓器移植者の物語が書けそうだなあ。(笑)
  • shiozy
  • 2010/10/29 2:17 PM
のりたまさん。こんにちは。チカちゃんのブルー再読ありがとうございます。口を手放したおばあちゃんも口を手に入れたチカちゃんも、共に幸せなんでしょうが、果たしてそのままで終わるのでしょうか?(もうこれ以上いえねえ)
  • shiozy
  • 2010/10/29 2:19 PM
読んでない はず なのに・・ とうちゃんが 口がない人間って 言葉言ったのでドキリ。

前の持ち主の思いが強い分だけ 次の持ち主のところへ行っても意志を通そうとしたんですね。
たぶん・・ 私の口も キスをしたら 同じ反応するなって思いつつ 。 言いたいコト言うだろうなってね。

チカちゃんに言いたい。「口がある ない ってコトが問題じゃなくって・・ 想いを伝える 気持ちがあるかが 口がある・ないってコトじゃないか?」って私 いつも思ってますって。
五体満足で生まれても 機械人間のように 黙ったまま。でも悪口とか人が不愉快になるこそこそ話の時だけは口をつかう。そんなお人は 口がない人間と思われます。何かの理由で言葉がしゃべれなくとも 筆談や表情で 意志を伝えることができる人は口のある人間。ってね。

だって・・今 しゃべれるこの口、たといば 突然耳が聞こえなくなる病気になって、舌ガンになって、喉の病気になって・・ しゃべるすべを失ったとき みんな どうするのかな?
  • はるめ
  • 2010/10/29 3:19 PM
>最近の・・・・主流
へぇ〜、そうなんですか。

文体だの語尾だの、普段はそんなに気を付けて読まない(内容だけざっくり理解して読む)ので、気が付きませんでした。
一応、自分で何かを書く時には、表記ゆれだの、漢字の使用頻度だの、句読点の位置だの、改行のペースだの、イロイロ気を付けるようにはしているんですが。

・・・・・何で最近は閉じ括弧の前に句点を打たないのかしら?
  • にゃんた
  • 2010/10/29 4:07 PM
はるめさん。こんばんは。父ちゃんも隠れて読んでいるのかな?(笑)

口がない。つまり何かが欠けているというのは、世間とは違う私という認識なのでしょうが、私から言わせれば、世間と同じ私、なんてクソ食らえと思います。人とは違う私。だからこそ、私が私で在れる。何かが欠けている私は、実は世界にかけがえのない私なのだと思います。
  • shiozy
  • 2010/10/30 8:07 PM
にゃんたさん。こんばんは。「何で最近は閉じ括弧の前に句点を打たないのかしら?」続いてのいい質問ありがとさんです。このコメント欄で回答するにはもったいないので、いまからブログネタにいたします。
  • shiozy
  • 2010/10/30 8:07 PM
柿辰丸さま、にゃんたさま、のりたまさま、はるめさま

感想ありがとうございます!
今回は過去最高に異次元な内容なので(いや、口がないこと自体異次元なのでしょうか・・・?)、はたして受け入れてもらえるだろうかとドキドキしていましたが、心配するようなことはなかったようで安心しました。引き続きお楽しみいただけるとうれしいです。
  • 弟子3@桐矢
  • 2010/10/30 10:34 PM
shiozyその解釈は違います。

口があるかないか?は問題ではなくって・・

しゃべるコトができるのに 能面のような表情でまるで機械人間のような しゃべることを 損することのような人たちです。


ありがとう も ごめんなさい も 知ってるのに言わない。

五体満足でいるのに 使うコトを放棄したような人を 口がないね。って思うだけです。
何らかの原因で 上手くしゃべるコトができない人が います。 でも 自分の意志を伝えるために 言葉の書いたカードを 用意して見せてくれたり 手で文字を書いたり 携帯電話のページ画面を見せて身振り手振りで一生懸命お話してくれます。

そういった 意志を 伝える気があるか?否か?
・・の コトを書いたつもりなんですけど
shiozyはどうして 人と同じであることが いいってワタシが思ってるって思われたのでしょうか?
我が子のコトで みんな違ってみんないいを実感してるのワタシの気持ちをshiozyはよく知ってるはずって思ってのは 誤解だったのですか? 短い文章で思いを伝えるって本当に難しいですね。
作家さんや ミュージシャンのMCを思い出しました。
  • はるめ
  • 2010/10/31 8:24 PM
はるめさん。こんにちは。お、お怒りですか?(笑)
「つまり何かが欠けているというのは、世間とは違う私という認識なのでしょうが」←この主語が抜けていたのが誤解の原因だな。すまん。主語は「世間の人は」である。(汗
  • shiozy
  • 2010/11/01 11:11 AM
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