<お勧め読書037:涙垰―赤名・布野石見銀銅助郷公事>

  • 2015.06.19 Friday
  • 11:01




『涙垰―赤名・布野石見銀銅助郷公事』  (菁文社 戸塚らばお)

時代小説といえば、主人公は歴史上の英雄か、

あるいは想像上の造形人物というのが通り相場だが、

地方にも埋もれた傑物がいるのである。

弱者であるがゆえに、歴史のなかに埋もれてしまい、

光を当てられることはない。

そんな人物に焦点を当てて、果たして小説になるのか。

島根の小藩・広瀬藩の赤名宿二十一か村は、石見銀山の輸送荷役を担う。

島根県赤名から広島県三次まで七里(約28キロ)とはいえ、

そこに立ちはだかるのは名にし負う豪雪地帯。

馬も通わぬ険路を馬280頭人足500名で銀銅を運ぶのである。

この苦役に貧村は疲弊してしまう。

武士という権力構造に、強訴・一揆という実力行使ではなく、

公事(くじ:訴訟裁判)という一見穏便な手法をとった庄屋達がいた。

せめて赤名宿から布野宿までの3.5里に半減できないかと、

幕府に訴えるのである。

ここには、赤名と布野という貧宿同士の対立があり、

幕府という巨大な官僚機構が横たわる。

十数年の歳月を費やしても何の解決ももたらさない虚しさに、

ついには、銀銅を布野宿に置き去りにするという実力行使に及ぶのである。

強訴でもなく一揆でもない、百姓の意地の発露である。

若き庄屋・半平太は打ち首。

悲劇のうちに幕は降りるのだが、その父親は夢見る。

「峠を越えなくていい隧道(トンネル)を掘ろう」

それが現在の赤名トンネルかどうかは定かではないが、

そう思いたくなる歴史ロマンを予感させる。

吉田掛合から三次までの高速道路が開通した。

半平太の死から約200年後である。


<shiozyのお勧め度☆☆☆☆>
地方には、地方ならではの優れた作家がいる。
埋もれた史実を拾い集め、それを小説にしてみせる。
この戸塚らばおもその一人だろう。
この「涙垰(なみだたお)」を読んでいる途中に、
どこか「既視感」に見舞われた。
蔵書を探ってみると、あった。
既読の作家だった。
私より二歳上の三次在住の作家。戸塚らばお。
お会いしてみたいものだ。
「涙垰―赤名・布野石見銀銅助郷公事」
三次市の地方出版社・菁文社(せいぶんしゃ)刊
戸塚らばおとこの出版社にも拍手を贈ろう。

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