<お姉さんの名前>

  • 2010.09.25 Saturday
  • 22:04


桐矢連載第10話。

 

いよいよ佳境を迎えたのか。

 

さてどうなる「口のない友達」?

 


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「口のない友達」10  お姉さんの名前   桐矢絹子

 


あのお姉さんに口があった。

 

まちがいない。さっき駅前ですれちがったあの人は、

 

体験教室のときにいろいろ教えてくれた口のないお姉さんだ。

 

女の人と楽しそうにしゃべりながら歩いてた。

 

あれは、おばあちゃんの口?

 


その夜、仕事から帰ってきたパパに口を落札した人の住所を聞いたけど、

 

「お前は知らなくていい」と繰り返すばかりで教えてくれなかった。

 

それでもしつこく聞くと、

 

「ママには内緒な」と言ってしぶしぶ名前だけを教えてくれた。

 

明日陶芸教室に行って、先生にあのお姉さんの名前を聞いてみよう。

 

心臓がどきどきしていた。

 


マリに口の落札者のことをしつこく聞かれて焦った。

 

口をオークションに出品したあと、

 

入札はしないものの、変わった質問がいつくかあった。

 

「口をふたつ持つことはできるんでしょうか?」や

 

「その口とおしゃべりすることはできますか」と。

 

冗談じゃない。お袋の口だぞ。

 

大事にしてくれる人でなければ渡せるものか。

 

だいたい俺は納得したわけじゃない。

 

だが、お袋はすぐにでも口を捨てそうな勢いだし、

 

もし本当に捨ててしまったら、

 

やっぱり売ればよかったのよ、と奈保子に責められるだろう。

 

だからとりあえず出品だけはして、入札が無ければそれで終わりにしようと思っていた。

 


売ろうとしたけど売れなかった。

 

それでいいじゃないか。あとはお袋だ。

 

だれも欲しがらないものを捨てたってしかたないって、諦めてもらえないだろうか。

 

・・・もらえないだろうな。

 

お袋にとっては、自分の口を欲しがっている人がいようがいまいが、関係ない。

 

ただ口を手放したいだけなのだから。

 

ああもう、どうすりゃいいんだ。

 

俺はお袋に、口を手放して欲しくなんかないんだよ。

 

・・・とりあえず、出品期間が過ぎたら、お袋に話をしにいこう。

 

その先のことは、またそれから考えればいい。

 

大丈夫、時間はまだある。

 


しかし、残り時間があと一日となったところで、入札があった。

 

「わたしには口がありません。どうか、この口をわたしにください」

 

というコメントも書き込まれていた。

 

口がないだと? そんな人間がいるのか?

 

からかっているんじゃないだろうな。

 

だが、確かに入札されている。

 

あんなばあさんの口を買ってどうするつもりだ?

 

口がないというのだから、自分が使うのか。

 

世の中には口がない人間もいるんだな。

 

そんな人、今まで見たことがない。

 


・・・・とにかく、入札があったんだ。

 

奈保子の言うように、どうせ捨てるくらいなら売ったほうがいいよな。

 

だれかに使ってもらえるなんて、あんがいお袋も喜ぶかもしれない。

 

どうせ俺の言うことなんて聞きやしないんだ。

 

このことで奈保子とまたもめるのも面倒だ。

 

売ってお互いが納得するなら、それでよしとしよう。

 

奈保子だって、金が入れば少しはヒステリーがおさまるかもしれないし。

 

俺はこの人に、お袋の口を売ることに決めた。

 


お袋の口を落札したのは、同じ街に住む

 

「イワサキ チカ」という人だった。  <続く>

 


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コメント
やっと!話が繋がりましたぁ〜

けど…
まだまだ伏線がありそうでワクワクします
しつこいようですが
マリちゃんは何を伝えるのだろう?ね
  • のりたま
  • 2010/09/26 11:17 PM
shiozyさん、こんばんは〜
またまたご無沙汰のkanarinです
しかし、凄いですね〜
口ネタ一つでここまで引っ張って来られますのは!
そして帳尻が合って来ましたね(笑)
お弟子さん頑張っていらっしゃいます
そこ行くと、私は頑張りが足りないようです
カメラも腕が上がらず〜どこかに習いに行きたいくらいですのん
のりたまさん。こんにちは。毎々の一番乗りありがとうございます。桐矢も泣いて喜んでいることでしょう。辻本家の話から、チカちゃんとの絡みの話へやっと到着です。(笑)
  • shiozy
  • 2010/09/28 10:27 AM
kanarinさん。こんにちは。またまたお久しぶりです。弟子入り半年で、桐矢はここまで到達しました。観念論者だった桐矢が徐々にストーリーテラーに変身しつつありますね。kanarinさんもカメラ修業で師匠を見つけましょう。
  • shiozy
  • 2010/09/28 10:28 AM
のりたまさま、kanarinさま

感想ありがとうございます!
いろいろやっていると、いつの間にやらそのような形になりました。この次の回が好きです。引き続きお楽しみいただけるとうれしいです。
  • 弟子3@桐矢
  • 2010/10/02 12:30 AM
桐矢へ。「この次の回が好きです」←催促か。(笑) 今晩アップする予定だからしばし待たれよ。
shiozy師匠

いやいやいやいや〜、催促なんて滅相も無い!
ただ、あんまり溜めて大した事ないジャン、ってなったらかなしいなと。
催促みたいですね、ウフフ(笑)
  • 弟子3@桐矢
  • 2010/10/02 7:22 PM
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