<だれにも言わない>

  • 2010.10.03 Sunday
  • 09:12


桐矢連載第11話。

 

更新が半日遅れて叱られそうな按配のShiozyである。

 

なぜ叱られるかというと、

 

自信作の章なので早く読んでほしいと思っているのに、

 

Shiozyが更新してくれないからである。

 

だから、団地掃除を途中でさぼって更新するのである。

 

団地の人からも叱られるのである。。。

 

 

最初から通読したい方は、

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「口のない友達」11  だれにも言わない   桐矢絹子

 


おばあちゃんは縁側に座って庭を眺めていた。

 

おばあちゃん、と声をかけると、目を細めて手招きした。

 

となりに座ると、庭でつんだ小さな赤い花を

 

あたしがあげた湯のみに挿しているのを見せてくれた。

 


 これ愛用しているよ。ありがとうね、マリちゃん

 

メモ帳にそう書いてみせてくれた。

 

「おばあちゃん、不便なことはない?」


 なんにも不便なことはないよ

 

 おばあちゃんにはね、今まで見えなかったことがいろいろあるって

 

 わかるようになったんだよ


そう書いたメモ帳をあたしに渡して、おばあちゃんは台所へいった。

 

お茶を入れて再び縁側に戻ると、

 

入ったばかりの温かいお茶をそっとあたしの近くに置いてくれた。

 

お盆の中の包みに入ったお菓子を指差し、

 

 このお菓子は甘くておいしいよ

 

と書いた。

 

あたしのために用意してくれているいつものお菓子だった。

 

「・・・おばあちゃん、あたしおばあちゃんに言ってないことあるんだ」

 


おばあちゃんは なあに? という風に首をかしげてあたしをみた。

 

「おばあちゃんがいない時にね、いつも病室でおじいちゃんと、

 

おばちゃんのことを話してたんだよ。

 

いけないと思いつつもついつい辛く当たってしまうって、おじいちゃんよく言ってた。

 

いまさら謝ることもできないって。

 

おばあちゃんは優しいから、甘えてしまうんだって。

 

黙ってついてきてくれて感謝してるって、いつも言ってたよ」

 


おばあちゃんはこくりこくりと頷きながら聞いていた。

 

すこし向こう側に顔を傾けてしまって、

 

あたしには今おばあちゃんがどんな顔をしているのかは見えない。

 

きっとおばあちゃんは、おじいちゃんの口から聞きたかっただろうな。

 

何度もちゃんと自分で言った方がいいよっておじいちゃんを応援したけど、

 

いつも 「今日も言えなかった」 「やっぱり言えなかった」

 

っておじいちゃん、申し訳なさそうな顔してあたしをみてた。

 

だからあたしがいつかちゃんと伝えなきゃってずっと思ってた。

 

遅くなってごめんね、おばあちゃん。

 


マリちゃんが帰ったあと、洗濯物を取り込んでいると

 

うっかり小石につまづいてせっかく乾いたタオルを地面に落としてしまいました。

 

昨晩の雨で土がまだ湿っていたからタオルは泥だらけ。

 

また洗濯しなおさなくちゃなりません。

 

「お前はまたそんなつまらんヘマをして。

 

まったく、わしがいないと何ひとつ、まともにできないのだから困ったものだ」

 


はい、はい。すみませんね、おじいさん。

 

あなただって大事なことは何ひとつ、言ってくださらなかったじゃないですか。

 

困ったものはお互いさまです。

 


おばあちゃんに言ってしまった。

 

口を手放す前に言えば良かったとずっとずっと後悔してた。

 

そうしたら、おばあちゃんは口を無くさなかったかもしれない。

 

あのお姉さんが持っている口は、おばあちゃんの口だ。

 

返してと言えば、返してくれるかな。

 

あ、でもお金を返さなきゃいけない。

 

ママ、うるさいく言うだろうなぁ。

 

でもあのお姉さん、口があってうれしそうだった。

 

返してなんて言ったら、悲しむかな。

 

だいたいおばあちゃんは、口を返して欲しいなんて思ってなさそうだった。

 

でもあれは、おばあちゃんの口なのに・・・。

 


「おばあちゃんは、口がなくても幸せなの?」

 

  ああ、幸せだとおもうよ。

 

  おばあちゃんは、口がない方が向いているのかもしれないね

 

「そっかぁ。・・・それなら良かったね、おばあちゃん」

 

あたしは余計なことをしちゃいけない。

 

だから、おばあちゃんとおしゃべりできなくなってさみしいと思ってることを、

 

あたしはだれにも言わない。   <続く>

 


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コメント
初めまして。「広島ブログ」のクリックをShiozyさんにしていただいて光栄です。ランキングには戻ってこられないのですか?
ブログを通じて素敵な文章を拝読させていただます。
柿辰丸さん。はじめまして。といっても、柿(妹)さんとは長いお付き合いで、以前から辰丸さんのことは存じ上げていたのですよ。広島ブログであれよあれよという間にランクアップして、とうとう河野先生を抜いてしまいましたがな。おめでとうございます。これを記念にこれからは「辰あにい」と呼ばせてもらいましょう。(笑 )俳優業でのご活躍をお祈りいたします。
  • shiozy
  • 2010/10/03 11:13 AM
ダメだぁ〜! これはダメ〜!

久しぶりにスイッチONで号泣です。

がんばって数分で立ち直りましたが

まだちょっと引きずってます。。。(⊃_;)

イイ年になっても泣き虫なままの私のことを

口はあるけどしゃべらなくなった母が

写真の中から笑って見ています。。。
うーん、又もや「続く」、、、、じらされてます。
  • クロス
  • 2010/10/03 9:10 PM
なんとなくおじいちゃんの気持ちには察しがついていたけれど
うまく書くなぁ〜

それにそれを聞いたおばあちゃんの反応も泣けるネ

で、どう続くんだい??

  • のりたま
  • 2010/10/03 11:48 PM
アクビさん。こんにちは。体調が悪くならない程度に泣いてくださいね。(笑)写真の中のお母さんには、いつも笑顔でいてほしいものです。それにはアクビさんが元気になることが一番ですね。
  • shiozy
  • 2010/10/05 11:22 AM
クロスさん。こんにちは。まだまだ「続く」ようですよ。桐矢は終わり方がわからないらしいですから。(笑)
  • shiozy
  • 2010/10/05 11:23 AM
のりたまさん。こんにちは。予想通りの展開でしたか。「泣かせ」がうまくなった桐矢です。私的には、次の章が好きです。続きを楽しみに。
  • shiozy
  • 2010/10/05 11:23 AM
柿辰丸さま、アクビさま、クロスさま、のりたまさま

感想ありがとうございます!
辻本家の人々の話はこの章を目標に進めてきましたので、一安心です。しかしまだ続きそうですので、のんびりお付き合いいただけると嬉しいです。
(師匠に、のんびり書く気か?とツッコミをいただきそうですが・・・汗)
  • 弟子3@桐矢
  • 2010/10/07 12:05 AM
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