一人っ子を悔やむのは、こういう時である。私が30代の頃の話である。娘は小学3年生だったろうか。
その日、私は会社を休んで家に居た。
学校が終わって帰宅した娘は、玄関の鍵を開けずに、裏庭に回った。
庭で飼ってる犬とじゃれていた。
私はそのじゃれあいを二階の窓から微笑ましく眺めていた。
娘は私が見ていることを知らない。
犬と娘はキョウダイのようにじゃれあっている。
じゃれあいがだんだんエスカレートして、ケンカ風になってくる。
娘が強く犬をたたいた。
すると犬はいきなり娘に噛み付いた。
犬にしてみれば、アマ噛みの部類なのだろうが、
しかし、娘にとったら驚きの反撃だった。
娘は噛まれて泣きもせず、庭の水道を開き、犬に水を掛け出したのだった。
この犬は、水が大嫌いだった。
「キャン」とひと声鳴き、尻尾を巻いて犬小屋に逃げ込んだ。
それでも娘は容赦をせず、犬小屋が洪水になるほど水攻撃を続けたのだった。
「ああ、学校でいやな事があったのだろうな。
まさか、イジメでは?
こんな時、キョウダイでもいれば泣きつくことができるだろうに」
一人っ子の悲哀を想った私は、その日一日、娘が寝るまで、
部屋の中に隠れていたのだった。
娘が犬に当り散らしているとき、出て行って慰めることもできたのだが、
それは逆に、娘の自尊心を傷つけるように思ったのだった。
一人っ子の、気持ちの持って行きようのなさに、心が痛むのだ。
<解説>
向田邦子のエッセーに、「あ」というタイトルの作品がある。
バスの中でお金を忘れた少年のエピソードと、
犬を散歩させる少年との出会いの話であるが、
前者のはにかみと後者の捨て台詞、その両方の少年の姿を見て、
向田邦子は最後をこう締めくくる。
「子供を持たなかったことを悔やむのは、こういう時である。」と。
今回はこの締めのフレーズをいただいて、書いてみた。
和歌の「連歌取り」みたいなお遊び。
タイトルも「あ」に対抗して「キャン」としてみた。
まだまだ募集中。
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