<どうする?最終回>

  • 2008.10.28 Tuesday
  • 16:21

明日は恒例の「ブログコラボ」の日である。

しかも最終回である。

お題は「読書の秋」である。


朝からネタを考えているのだが、構想が浮かばないのである。

「読書の秋」だけなら、いくらでも書けるのだが、

最終回にふさわしい話となると、どういうストーリーにすればいいのか?

迷いに迷っているのである。


迷うくらいなら、GS物語を続けろ。

そういうご意見もあるだろうが、ここはひとまず「大団円」としたいのである。

ふむ、「大団円」だな。

ここはひとつ、お題から離れて、「大団円」を書いてみようか。

最後の最後に、お題を外すのもなんだしなあ。


心はチヂに乱れてうまくまとまりそうもない。

そのせいで、今日のブログを書く余裕がないので、

言い訳のブログを書いてみた。


さてどうなるのか、明日。。。


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コラボ26<台風>

  • 2008.10.22 Wednesday
  • 06:30

うちの会社が委託している在米調査員Mr.Cross氏によると、

10月に入ってアメリカのガソリン価格が急激に下がってきているという。

先週は、とうとう1ガロン(約3.8函砲3ドルを切ったらしい。

「うーーん、こりゃ、ますます安値競争になるなあ」

「地域最安値に挑戦」という看板を掲げた手前、

店長はその先頭に立たざるを得なくなって、自分の首を自分で締めているようだ。


それにしても、ガソリン価格の変動は激しすぎるよね。

9月初めのMr.Crossレポートでは、

<ハリケーン「カトリーナ」でメキシコ湾周辺製油所は大打撃。

石油需給逼迫、石油価格高騰必至。>

と書かれていた。

添付された新聞には、

< 米に最大級ハリケーン

大統領が避難要請

避難所に市民殺到

被災者50万人か? >

という見出しが躍っていた。

それなのに、1ヶ月もしないうちに今度は暴落だって。

「サブプライム問題で金融システムが崩壊し、

投機筋の資金が逃げていって結局値崩れ。

おれ達はマネーゲームの犠牲者だなあ」

と店長が嘆くのも無理はない。


「吉岡、今日の県内最安値はいくらだ?

ちょっとパソコンを覗いてみろ」

店長がこういうので、ボクはガソリン価格比較サイトを開いてみた。

「うわあ、店長。141円になってますよう」

つい十日ほど前、うちの店長が思い切って地域最安値154円を出し、

IC店の大野店長が県内最安値152円を出したばかりだというのに、

もう10円以上の値下がりをしている。


「こりゃー、ガソリン業界のベトナム戦争だ」

店長がわけのわからない喩えを言ったので、

「それって、何ですかあ?」と、鈴木君がボケた質問をした。

「泥沼化、という意味」と、すかさずボクが答えたら、

「鈴木より吉岡の方が少しはマシか」と、

店長は小さくつぶやいたのだった。

ボクは鈴木君よりちょっとだけ歴史が得意みたいだ。


「このままじゃ、泥沼の価格競争で自滅してしまう。

なんか思い切った手を打たないとな」

誰に言うともなくつぶやいて、事務所から出て行った店長なのだった。


夕方、店長が帰ってきた。

様子からすると、本社で会議だったみたいだ。

本社の会議から帰ると、だいたい暗い顔をしているのが普通なのだが、

今日はなんか張り切っている雰囲気だ。

「吉岡、鈴木、来週はこれをやるぞ」

と言って見せられたチラシのようなものに、

「店じまいセール」の文字が。

「ええっ、店を閉めるのですかあ」

ボクと鈴木君は同時に声を発したのだった。

「ばか、よく見ろ。

店じまいとセールの間に小さく<の覚悟でやり抜きます>とあるだろう」

「ええっ、それってダマシじゃないですかあ」

鈴木君が突っ込んだけれど、店長は動じなかった。

「店を閉める覚悟の在庫セールなのッ。

失敗したらほんとに閉店になるかもだぞ」


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考え付く限りの販促案が並んでいる。

「こんなことして大丈夫ですか?」

ボクが遠慮がちに尋ねると、店長はきっぱりと

「これをやりぬく」と答えたのだった。

「競合の激しいうちの店とIC店の合同企画だ。

明日から二人は、このチラシを周囲の団地へポスティングしてくれ。

これでお客さんが戻ってこなかったら、うちは閉店だと思えよ」

店長の言葉は、いつになく厳しかった。


来週、お客さんがたくさん来なかったら、

ボクのバイトも終わりかな。


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「山田さんち」のなほさん。

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さて、来週は「GS物語」も最終回。どんな結末になるのでしょうかねえ。

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コラボ25<流行>

  • 2008.10.15 Wednesday
  • 06:30

夏休みに、アメリカへ看護研修に行った。

たった10日間ばかりの駆け足研修なので、あまり期待してはいなかった。

大学の後期が始まると、実習ラッシュが待っている。

その前のリフレッシュ旅行くらいにしか考えていなかった。

はっきし言って観光っていう感じ?かな。

姉妹校のコロラド大学デンバー医療センターに着くと、

レセプションなどの公式行事が続き、正直退屈だった。

医療センター長や介護師長の講義も、英語が半分くらいしか聞き取れないため

こちらも正直退屈だった。

私的にはむしろ、ランチタイムの食堂で、

「Are you from?」と話しかけてきた看護婦さんがおもしろかった。

「韓国?」と訊くから「日本」と答えると、

彼女は「ホンダ、トヨタ、マツダ」を連呼した。

知っている日本ブランドを列挙して、お愛想をしてくれたのだろう。

広島の人間としては「マツダ」が入っていたのはうれしかったが、

心の中では「クルマばっかりかい」とツッコンでしまったのだった。

すると、私の胸中を見透かしたように、

「すし、すきやき、ソニー」と、サ行ブランドを追加した。

「はははっ」と私は声に出して笑った。

ソニーがすしやすきやきと肩を並べたのは、ある意味すごいことだなあと思ったのだ。


日本といえばクルマやハイテク機器というイメージから、

日本の食文化が同列で語られる。

それは彼らにとってファッションとしての「食」なのだろうが、

文明ではなく文化を評価されるというのは、とても感動的なのだった。


帰国してまもなく、サブプライム問題が表面化し、

世界標準とされたマネーゲームという名の金融システムが崩壊した。

私が吉岡君にお土産として買って帰った「記念硬貨」も、

いまやありがたみは薄れてしまった。


そんなこんなで、アメリカ研修後の私はいろいろ考えたのである。

吉岡君が、「リエさん、急に変わったぽくない?」というくらいだから

確かに変身しているのだと思う。

帰国後、一番に思ったのは「主張しよう」と言うことだった

自分の考えをきちんと語る。

これがアメリカ研修の最大の成果だ。

自分の考えを誰に語る? どこで語る?

吉岡君に八つ当たりしてもしようがないので、

自分の考えの発露の場を持つことにしたのだ。


今、流行の「ブログ」を開設したのだった。

ブログ「看護学生@エリー日記」

まだ一ヶ月にしかならないが、ほぼ一日おきには更新できている。

きつい実習の毎日の中で、我ながら良く続いているなあと感心する。

書いていることは、実習の愚痴みたいなものだが、

それでも一ヶ月を振り返って読んでみると、

自分の思いがおぼろげながらでも見えてくるような気がするのだ。

まとまりのない愚痴みたいなものの中に、

あっ、私はこう感じてるんだ、とか、

学校ではこう習ったけど、医療の現場では必ずしもその通りにはいかないんだ。

さてその時、自分はどう対処する?、とか、

いろんな気づきをもらえた一ヶ月のブログだった。


ちなみに、10月8日のブログにこんな話を書いた。


今週はデイケア施設での実習だ。

朝からご利用者さんのバイタルチェックで忙しい。

私たち実習生は看護師さんの補助とはいえ、いちどきに集中するので、

少しでもお役に立ちたいと率先してチェックする。

おしめをしたおばあちゃんの介助や、朝から入浴があったりして、

介護師さんたちも眼の回る忙しさだ。

介護師さんの目が届かなくなって、一人のおじいさんが

車椅子から食堂の椅子に移り坐ろうとしていた。

車椅子から立ち上がるのも難儀している様子。

食堂の椅子に移動しようとしてよろけそうになる。

それを見て、私はあわてて駆け寄って介助しようとした。

すると、おじいさんが

「ほっといてくれ」と言って、私を突き放したのだ。

私は一瞬、頭が白くなった。

何かいけないことをしたのだろうか?

おじいさんの機嫌を損ねることをしてしまったのか?

おじいさんの剣幕に、正直傷ついたのだった。


あとで、先輩介護師さんから聞いた話では、

「S岡さんは、今リハビリで一生懸命なのです。

他人に介助してもらわずに、一人でどこまでできるか挑戦中なのです。

入院中のおばあさんを家に連れて帰って、おじいさんが介護したいと思っているのです。

早く自立したい。その思いが他人の援助をはねつけているのです」


一生懸命リハビリしている人への、安易な介助は拒否される。

私は、老老介護の現実を初めて見たのでした。


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コラボ24<贈り物>

  • 2008.10.08 Wednesday
  • 06:30

「おう、ついにやったかあああ」

パソコンに向かっている店長が、語尾をのばしながら叫んだ。

「なんかあったんですかあ?」

バイト仲間の鈴木君が間延びした口調で店長に声をかけたら、

店長は興奮した様子で

「大野店長がとうとうやったぞ」と答えた。

ボクたちはわけがわからず、鈴木君は

「なにをやったんですかあ?」

と相変わらず間延びした口調で訊いた。

「大野店長が、最安値をつけた」

ボクたちが店長のパソコンを覗き込むと、

画面は「ガソリン価格ランキング」サイトだった。

そこのランキングトップに、うちの会社のIC店が表示されていた。

表示価格は152円。

「うわっ、すげー」

ボクと鈴木君は思わず叫んだのだった。


高速道路のインターチェンジ出口にあるIC店は、県内随一の激戦区に立地している。

普通、安値競争の先頭を走るのは、「無印」と呼ばれるメーカー系列外の店だ。

メーカーの看板を背負ってるうちの会社は、価格競争ではどうしても負けてしまう。

うちの店長が「地域最安値に挑戦します」という看板を掲げたのは、実はたいへんな決断だったのだ。

それをまねしたわけではないのだろうが、IC店の大野店長も一大決心をしたのだろう。

県内最安値を表示したのだ。

「本社がよく了解したなあ」

うちの店長が感心したようにつぶやいた。

「よし、オレも決断しよう」

「吉岡、この数字を出してくれ」

ボクに渡されたメモには「154円」の数字が書いてあった。

昨日下げたばかりの「156円」は、たった一日で消滅したのだった。

利益はどんどん減っていくのに、店長のやる気だけは旺盛だ。


「オレと大野は同期だしさ。

あいつががんばっているのだから、オレもがんばんなきゃな。

あいつのためには何もしてやれないけど、

エールを贈ることくらいはしてやらないと。

オレも地域最安値で踏ん張るから、お前も負けるなよ。ってな」


いつもの暗い店長より、張り切ってる方がいい。

ちょっとまぶしいね店長、だ。


まぶしいといえば、リエさんもだ。

夏休みに「国際看護学演習」というのに参加して、

コロラド大学で看護研修を受けたのが刺激になったみたいだ。

「アメリカの看護師って誇りを持ってるっていう感じ? 私も見習わなくっちゃ」

ボクとしては、今以上に誇りを持って欲しくない気持ちもあるけど。

それでなくても「しっかり者のリエさん」なんだから。

「アメリカの在院日数って知ってる?

日本のほぼ三分の一なんだからびっくりしちゃった」

それって、保険制度が日本みたいに整ってなくて、

医療費が高いからすぐに追い出されるだけじゃないの?

こんなツッコミを入れたかったけど、

リエさんの顔を見たら、とてもそんな勇気はでなかった。


店長にしても、リエさんにしても、

何かに向かって張り切っている人の顔って、輝いてるよね。

なんだかボクだけ取り残されたようで、落ち込みそう。


そういえば、アメリカ研修のお土産にもらったのは「25セント硬貨」だ。

デンバーにあるアメリカ造幣局の記念硬貨らしいけど、

いま、「ドル」も落ち込んでるね。

アメリカもボクと同じかな?


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コラボ23<アナログ>

  • 2008.09.24 Wednesday
  • 06:30

9月に入ってガソリンの需給がゆるんできた。

元売りの仕切値が下がって、ガソリン価格は下落した。

ふう、これでお客さんが戻ってきてくれると、安堵したのは早計だった。

安売り競争がかえって激化したのだった。


「地域最安値に挑戦します」

こんな看板を掲げたうちの店は、安値の先頭に立たざるを得なくなったのだ。

地上5メートルの高さにそびえる電光掲示板は、「レギュラー164円」の表示だが、

スタンド入り口の立て看には、「レギュラー160円」の表示。

デジタルとアナログの二重価格なのだ。

「店長、これじゃお客さん戸惑いますよ」

こう言ったら、店長は

「しょうがないの。電光掲示板は全店の統一価格。

うちの店独自の価格は、立て看でしか表示できないのだから」という。

せっかく、地域最安値に挑戦しているのなら、

お客さんが誤解するような電光掲示板は消してしまえばいいものを。

ボクにわからないむつかしい規制があるのだろうね。

ややこしい業界だ。


うちの店とモロ競合関係にある向かいの無人店が「160円」で追随しているとき、

少し離れたスタンドでは「168円」で営業している。

高速道路のスタンドは「175円」だ。

8円から15円の価格差は大きいよね。

なのに、お客さんの節約モードは緩まない。

店長の決断は間違っていたのか?

バイトのボクでも不安になるのだから、店長の苦悩は甚大だ。


苦悩といえば、ボクも同じだ。

就職戦線に取り残されて、一周遅れの就職活動を余儀なくされて、

それでもどう生きていきたいのかわからない自分。

我ながら情けないと思うんだよね。

情けないけれど、それが現実のボクだ。

リエさんは「もう悩むような年じゃないんじゃないの?」と

ボクを焦らすけれど、自分の進むべき道が見つからないのだからどうしようもない。

「えいやっと就職先を決めても、長続きしない気がするんだよなあ」

リエさんに正直にこう言うと、

「じゃ、両親にそう告白すれば」

あっさり切って捨てられた。


「もう一年、大学に残ろうか?」

自分に問いかけてみた。

一年残ったからといって、進むべき道が見つかるとは思えない。

しかし、漠然と「人の笑顔が見える仕事につきたい」という想いはある。

「これからの一年でなんとかなる」

自分で自分を納得させてみた。

その夜、この決意を両親に伝えようと思った。


「かあさん。もう一年大学に残ります。

授業料や生活費は自分で稼ぎます。

次の一年で自分の進むべき道が見つかりそうな予感があります。

ボクのわがままを許してください。」


こんな気持ちを送ろうと決意したとき、

これにふさわしいカタチって何だ?と、疑問が湧いた。

ケータイ? メール?

デジタルでは、軽すぎるよな。

そう思ったら、無性に手紙が書きたくなった。

誤字脱字に気をつけて、自分なりにちゃんと書けたつもりだ。

我ながら良く書けたと思ったが、最後にひとつだけ書き直したのだった。


かあさんを母上様と。


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コラボ21<夢>

  • 2008.09.10 Wednesday
  • 06:29

大学は夏休みに突入した。

さあ明日からはフルタイムで働くぞ。

そんなファイトが湧いてきたのだが、店長から先制攻撃を受けてしまった。

「吉岡、悪いけど今までどおりのシフトで頼むわ」

「えっ、ボク毎日でも大丈夫ですけどぅ」

店長からの返事はなかった。


8月に入って、ガソリン価格が一気に高騰した。

世間相場で言えば180円台だ。

高いところでは185円という店もある。

激戦区のうちの店は、それでも178円という設定で始まったのだが、

毎日日替わりで値段が下がっていく。

176円。174円。172円。


「お盆の書き入れ時を前に、こう値段が下がっては、

固定費を抑えるしか手がないんだ」

店長は申しわけなさそうに、ボクにつぶやいた。

向かいの無人スタンドとの競争が激しいのはよくわかっているから、

ボクも返す言葉がない。


お盆の二日前、向かいの無人スタンドがいきなり169円に値段を下げてきた。

需要期を前に、利益より販売量を確保する戦術だった。

それを見た店長は、即座に本社に電話をかけ、

「うちも169円で行きます」と宣言したのだった。

店長の決断はそれだけではなかった。

「吉岡、これを書いて店頭に出せ」

店長から見せられたメモにはこう書いてあった。

「地域最安値に挑戦します」


これまで無人スタンドのあとを追っかけてきた店長が、

初めてみせた決断だった。

「えっ、こんな看板を出していいんですか?」

思わずボクは問いただしたが、店長の決断は変わらなかった。


その日から、うちの店が看板を出すと、向かいの無人が追随するという構図ができたのだが、

値段を決める店長の顔色はますます暗くなったのだった。


ボクは大学4年生だ。

同級生の大半は就職を決めている。

ボクに焦りはないといえばウソになる。

店長は、「うちの会社に就職しろよ。オレが本社に掛け合ってやってもいいよ」と

言ってはくれるものの、店長の顔色を見ていると、ボクには自信が持てない。

夏休みのある日、就職合同説明会に行ってみた。

会場に行ってみて唖然とした。

会場に集まってるのは、3年生ばかりだったのだ。

ここまで世間知らずだったのか。自分の無知が恥ずかしい。

一周遅れの就職活動だった。

母が「あんたはのんびりしてるから」というのもうなずける。

最悪の夏休みだ。

リエさんのように、看護師になろうと志して看護大学で学ぶ人がまぶしく見える。

ボクのように「何者かになりたい」という想いがない人間はどうしたらいいのだろう。

両親は「夢を持て」というが、その「夢」が描けない人間はどうしたらいいんだろう。

悶々と過ごす夏休みだった。


「地域最安値に挑戦」という看板を出したものの、お盆商戦は最悪だった。

相変わらずヒマなのだった。

バイトの鈴木君としないでもいい掃除をしていると、

一台のスカGが爆音を蹴立てて入ってきた。

元暴走族のかしら島田さんのクルマだ。

「おう、満タン」

クルマから降りてくるなり、キーをボクに放り投げて景気良く言った。

以前はクルマに触っただけで怒鳴られていたのだが、

今はすべてをボクに任せてくれる。

島田さんがキーをボクに放ったときは、洗車をしろっていうときだ。

機械洗車にかけると叱られるけどね。

ボクはヒマなので、ゆっくり丁寧に手洗いをする。

車内もきれいに掃除する。

座席に掃除機をかけようとして、ふと助手席を見ると、

「老健ホームひまわり苑」と記されたパンフレットが目に入った。

「まさか、島田さんがデイケアじゃないよな」

ひとりごちたその言葉が、いつの間にか後ろに立っていた島田さんに聞こえてしまった。

島田さんは「ばーか」と言って、ボクの頭を軽くはたいた。

「オレのばあさんがよ、アルツになっちまってよ。

オレのことをよ、あんた誰?なんていいやがるから、老人ホームに閉じ込めてやった」

言葉は乱暴だけど、その口調は優しかった。

少し悲しそうな島田さんだった。

おばあさんっ子だったのかな、島田さんは。


おばあちゃんか。

そういえば以前出合った、徘徊するエツコおばあちゃんはどうしたんだろう。

最近見かけなくなったけど。

犬のシロを一生懸命探していたっけ。

エツコおばあちゃんの手を握って、一緒にシロを探してあげたら、

おばあちゃんうれしそうな顔をしたよな。

うれしそうな顔。笑顔。

ときどき泣いたりするかもしれないけど、でも笑顔。

そんな仕事に就けたらいいな。


獏とした夢を見ていたら、

「おーーい吉岡。帰るぞっ」

島田さんの乱暴だけど優しい声がとどろいた。


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コラボ第20弾<家出>

  • 2008.07.30 Wednesday
  • 06:29

ガソリンが高騰して客足が減ったせいなのか、最近夫が不機嫌だ。

昨晩も夜遅く帰宅して、シャワーを浴びるなりすぐに寝てしまった。

これまでなら、「明子は? 智子は?」と、まず娘の様子を聞きたがり、

風呂上りは好きなビールを要求するのに、それもない。

一学期の成績が下がった智子を夏期講習に行かすべきかどうか、

私だって相談したいことがあるというのに、しらんぷりだ。

GSの店長という責任上、店の業績低下に悩んでいるのはわからないでもないが、

それははっきり言って、一個人の力でどうにもならない問題だと思う。

だって、ガソリンが高くなって、お客さんが節約モードになるのって、あたりまえじゃん。

悩んでもしかたないことをくよくよ悩む。

夫は昔からそうなのよねえ。


あれは結婚して何年目だったかしらん。

確か長女の明子が小学校へ上がる前だったから、結婚して7年目?

「おれ、タバコやめようかなあ」なんて私の前でつぶやくから、

「口に出して言う前に、きっぱりやめなさいよ」と言ってやった。

しかし夫はまだ悩んでいる。

「やめられるかなあ?」

「やめるやめないは、あなたの意思の問題でしょ。

うじうじ悩むのは、男らしくないわよ」

「私って鬼嫁?」って、ちょっと気にかかったけど、

「なんだあ、この男は」と思ったのは確かだ。


この頃からかな、夫婦の間の感情のザラツキを感じ出したのは。

世間一般から言って、うちの夫はいい亭主だと思う。

浮気をするわけでもなく、ギャンブルに狂うわけでもなく、

酒乱でもなく、家族に暴力を振るうわけでもない。

しかし、どこか感情がザラつくのだった。


あるとき、クチャクチャ音を立てて食べる夫の癖が妙にイラついて、

「やめてよね。音を立てて食べるのは」と言ったら、

明子も同調して、「お父さん、きちゃない」と追い討ちをかけた。

そしたら、珍しく夫が怒って、持っていた茶碗を食卓の上に投げつけた。

「ガチャーーン」と安物の茶碗の割れる音には驚かなかったが、

その破片が次女の智子の頬に当たったから、それに私はキレた。

智子の頬にタオルを当てて、財布と明子の手をつかみ、

「実家に帰ります」と叫んだのだった。


実家に二晩ほど泊まり、考えてみれば他愛もない夫婦喧嘩だなあ、と思い出したとき、

母が「いい加減、家にお帰りよ」というから、子供を連れて家に帰った。

私が好きな同世代作家・重松清の小説の中に、確かこんな文章があった。


野球では、ホームランとかホームインという言い方をする。

つまり、野球というスポーツは、家から出て家に帰って来るスポーツなのだ。と。


そう、私も「ホームイン」しよう。

折りしも、「夏の甲子園」が始まる。


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「山田さんち」のなほさん。

「隣のカモミール」の柿さん。

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来週は8月のお題募集かな。

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コラボ第19弾<市民球場の思い出>

  • 2008.07.23 Wednesday
  • 06:29

本日はコラボの日ですが、諸般の事情によりお休みとさせていただきます。

「諸般の事情」とは何だ? 

ガソリンが高騰したから、省エネ対策としてブログを休む?

当たらずとも遠からず。

Shiozyの肉体のガス欠により、本日コラボ「GS物語」シリーズお休み。

しかし、このままブログを終わってしまっては、訪問された方々に申しわけない。

ということで、<市民球場の思い出>を転載しておきます。

中国新聞「ALL-INエッセー大賞」のお誘いで以前書いた文章の転載です。

すでにお読みの方はご勘弁を。。。

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「前田智徳のファウルボール」

その年の春、娘が中学へ入学した。

本来ならめでたいはずの春だったが、娘の表情は暗かった。

妻の秀子が子宮筋腫で入院していたからだ。

明日手術と告げられた広島市民病院の帰り道、

「お母さん大丈夫よね?」と訊く娘の言葉は重かった。


ちょうど折りしもカープの地元開幕戦の日だった。

大勢の人が市民球場に向かって歩いている。

「そうだ、娘は前田選手のファンだ。

ここはひとつ元気付けのため野球観戦でもしよう」。

そう心の中でつぶやいて、「野球見ようか?」と娘を誘ってみた。

娘はとてもそんな気分になれそうもないという表情だったが、

イヤとは言わず付いてきたのだった。


あいにく当日券は、ほとんど外野に近い内野席、

しかも三塁側しか空いてなかった。

あまりいい席とはいえなかったが、

それでも家に帰って父娘が暗い顔で過ごすよりはましだろう。

前田選手の活躍を見て気分を晴らしてくれれば、という父の思いだった。


その当時、前田選手はカープ入団3〜4年目だったと思う。

カープに4位指名で入団し、そんな下位指名にもかかわらず

高卒ルーキーとは思えない打撃センスを賞賛されていた。

二軍戦まで見に行くような熱烈なカープファンだった娘は、

すぐに前田選手のとりこになった。


その日の試合では、前田選手はタイミングがあってないようだった。

彼らしいライナーで抜ける強い当たりというのが見られなかった。

試合が後半に入って、確かランナー二塁で前田選手に打順が回ってきた。

快音が聞かれない不調時でも、さすが前田だった。

ファウルで粘りに粘ったのだ。


何球目かのファウルが、三塁側内野席に飛んできた。

内野席の中段辺りに落ちると思われた打球がぐんぐん伸びて、

上段に突き刺さった。私の席の前だった。

私はそれを思い切り手を伸ばして素手で取ったのだ。

周りから拍手が起こり、私より娘のほうが誇らしげだった。

「前田選手が、お母さん大丈夫だよ、と励ましてくれたボール」

娘はそう思ったに違いない。

明日から明るい中学生活を送ってくれれば幸いだ。


翌日、手がグローブのようにはれ上がったのは、

娘には秘密にしておいた。


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次のコラボは7月30日(水)。お題は「家出」です。

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コラボ第18弾<我が家のエコ対策>

  • 2008.07.16 Wednesday
  • 06:29

「店長、今日も値段が変わるんですかあ?

毎日まいにち、コロコロ変わりますねえ」

あきれた声でボクが言うと、店長はひと言、「そう、変動相場制」と答えた。

7月に入って卸値が一気に上昇し、うちの店は180円でスタートしたのだが、

ユーザーの「注ぎひかえ」にあい、閑古鳥が鳴く始末だった。

背に腹は変えられず、2円下げて178円にしたものの事態は好転せず、

先週は176円にまで下げたのだった。

これで少しはお客さんが戻ってきてくれると思ったのもつかの間、

今週はいきなり180円に戻ってしまったのだ。

バイトのボクには、何がなんだかわからない状況だけれど、

店長の「変動相場制」という自嘲気味の返事を聞くと、

仕入れ値がコロコロ変わってるんだろうなあ、とは推測できる。

しかし、「この間まで156円だったのが、なぜ急に180円になるんだ」と、

お客さんに叱られるのはボクたちだものね。

うちの店から1キロしか離れてない無人の激安店に、お客さんが流れないことを祈るだけだ。

「先週の店長会議で、200円時代が来るぞっと、社長がやけくそにつぶやいていたけど、

この分じゃ意外と早いかもな」

店長もやけくそ気味な声でつぶやいた。


店長の表情が暗いので、ここはひとつ明るい話題を振っておこうと、ボクは気を使った。

「店長、クルマを乗り換えて、すごく燃費がいいらしいじゃないですか」

よいしょの吉岡と呼んでくれい、てな感じ?

店長はすぐこの話に乗ってきた。


−−10年乗ったジープチェロキー4リッターの調子が悪くなって、

どのクルマに乗り換えようか迷ってたら、

長女の明子がこの夏休みに教習所へ通ってクルマの免許を取ると言い出した。

お父さん、クルマを換えるのなら、私が運転できるような小さいクルマにしてね。

そうしたら、お父さんが酔って帰るときも私が迎えに行ってあげられるしぃ、

お母さんの買い物だって送り迎えしてあげるよ。

まあ、調子のいいことを言うわけだ。

実際、迎えになんか来てくれないのはわかっているけれど、

こうガソリン代が高くなっちゃ、もう4リッター車なんていう時代じゃないよな。

油屋がそんな悲観的なことでどうする、というような話だけれど、

娘が大学・高校と一番金がかかる時期でもあるし、

ここはひとつお父さんが我慢するか、ということで、1300ccになっちまった。

4リッターから1300ccは情けないけど、しかし、燃費に関しては月とすっぽんだ。

4リッター車のときは、リッター10キロ走れたら飛び上がらんばかりにうれしかったが、

このクルマ1300ccに換えてからは、リッター15キロは当たり前。

ちょっと長距離を走ると18キロまで伸びる。

この間なんか、里帰りで一日400キロを走ったときなんか、リッター20キロを記録したものな。

このクルマには燃費計がついている。如何に記録を伸ばすか、今はそれが楽しみだ。−−


えっ、店長ってこんなにおしゃべりだったっけ。

「店長のキャラは無口じゃないんかい」

ボクは心の中でそうツッコンでみたが、話の腰を折ってはいけないので

黙って聞いていた。


−−吉岡、一番燃費のいい走り方しってるか。

お前はバイクだからあまり気にしたことはないだろうけど、

空ぶかし、急発進は最悪だぞ。

女性を扱うように、静かに柔らかくそっと発進する。これが極意だな。

で、なにかい、リエさんとはうまくいってるのかい?−−


店長、酔ってます?

この人こういうキャラだったっけ?


−−そっと発進して、ノッキングするくらいの低加速。静かにしずかに加速する。

徐々に加速してきたら、あとは安定走行。むやみにアクセルを踏まない。

たとえば、一般道だったら、回転数1500回転に保って走る。

信号のない直線道路だと時速60キロから70キロまで伸びてくる。

このときが最高に燃費が伸びるんだ。

高速道路だと、2000回転で時速80キロ。この状態を維持していると、

平坦な道だと90キロまで伸びる。このときも最高の燃費を記録するな。−−


店長、ボクに何が言いたいんですぅ。ボクはバイクでリッター30キロは走りますよう。

店長もバイクにしたらー、みたいな話じゃないですか。


−−吉岡、走り方ひとつで「エコライフ」ができるわけだ。

リッター20キロ走るおれは、すごいと思わないか。−−


まともに答える気がしないボクは、初めて声に出して言った。

「店長って、クルマと娘さんの話になると饒舌ですねえ」

店長は急に押し黙ったが、ボク的にはもっとツッコンであげたかった。

「クルマと娘、どっちが好きなんかい」

娘だろうね、きっと。


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「山田さんち」のなほさん。

「隣のカモミール」の柿さん。

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次のコラボは7月23日(水)。お題は「市民球場の思い出」です。

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コラボ第17弾<もしも私が異性だったら>

  • 2008.07.09 Wednesday
  • 06:29

はっきり言ってヒマだ。

閑古鳥が鳴くガソリンスタンドだ。

これまで4人シフトだったのが3人になり、

昨日からはとうとう二人体制になってしまった。

そのあおりを食らって、ボクはむりやり休みを取らされたのだった。


無理もないよね。

暫定税率が復活して、毎月の値上げだものね。

うちの店の場合、5月158円だったのが6月には168円になり、

7月からは180円だもの。

お客さんも節約モードになるはずだ。


うちの店は住宅街立地なので、個人ユーザーがほとんどだ。

個人ユーザーの財布の紐は固い。

なるべくクルマに乗らないようにする、というお客さんが増えたし、

給油の仕方も、これまで「満タン」と言ってた人が、

最近は「10リッターね」と細かく指定するようになった。


こんな調子じゃ、バイトを首になるかも、と不安だ。

せっかくの休みでリエさんとデートなのだが、明るく振舞えないボクがいる。

「どうしたの? 楽しくなさそうな顔だけど」

リエさんは敏感にボクの表情を読み取る。

ボクのことを気にしてくれるのはうれしいけれど、

言ってみても何も解決しないから、ボクは曖昧にうなずくだけだ。

「どうしたのよー、うじうじして。男らしくはっきり言ったら?」

答える代わりに、「リエさんの方が男らしいね」ってツッコミ返したら、

「はっはっは」と、豪快にリエさんは笑ったのだった。

「私、三姉妹の末っ子で、小さい頃から両親に、

お前が男だったら良かったのにねえ、って言われてきたんだよね。

自分でもなんとなく、上の姉二人とは違った振る舞いをしたくなるんだよね。

向こうが女っぽいなら、私は男らしくみたいな・・・」

「リエさんが男なら、キップがいいだろうね。ボクが女なら惚れるかも」

「女の私には惚れんのかい」

リエさんのツッコミで、二人は大笑いしたのだった。


「女ってね、変身願望があるのよね。

突然、髪を切ったり、メイクを変えてみたり、

これってある種の変身願望だと思うのよね。

今の私じゃない私、みたいなー気持ち?

夢想しながら現実的、というのが女かな?」

リエさんがえらくまじめに語ったので、ボクもまじめに返した。

「現実的そうでロマンチストなのが男」

「はっはっは。吉岡君ロマンチストなんだあ」


「ロマンチストと言うよりは」 リエさんの振りに、

ボクは合いの手を入れる。 「ロマンチストと言うよりは」

リエ「腐った肉に湧く虫と解く」

ボク「その心は?」


「うじうじ優柔不断」

ボクは、リエさんの頭をどつく格好をしてツッコンでやった。

いいコンビだよね、ボクたち。


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次のコラボは7月16日(水)。お題は「我が家のエコ対策」です。

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